商品開発におけるナレッジマネジメント
直面する課題と解決策
- ナレッジマネジメント
長年にわたって繰り返してきたトライ&エラー。自社に蓄積されている知識やノウハウ。それらを有効活用して新商品の開発を効率よく進めたい。開発者、技術者の生産性や創造性をもっと向上させたい。そのための施策として、ナレッジマネジメントやナレッジのデータベース化に取り組む企業は少なくありません。本コラムにおいては商品開発に焦点をあて、ナレッジマネジメントを紐解いていきます。
商品開発におけるナレッジマネジメントの役割
ナレッジマネジメントとは、社員のもつ持つ知識やノウハウといったナレッジを組織全体で共有し、組織の生産性の向上や新規事業の開発などにつなげる経営手法です。
ここでは商品開発におけるナレッジマネジメントの主な役割を挙げてみます。
効率と質の向上
開発チームは常にゼロベースで考えるのではなく、過去のプロジェクトから得られた知識と経験を共有して整理。ナレッジを新たな商品開発に活かすことで、効率的なプロセスを実現します。着実に溜めてきた知見を活用すれば研究も進みやすくなり、アウトプットの精度も上がりやすいです。
イノベーション推進
新しいアイデアは複数の要素を組み合わせることで生み出されるという説があります。それによると組み合わせのもととなる要素の数が多いほど、かつ内容がユニークであるほど、斬新なアイデアが生み出される可能性が高くなります。実際に社員から多くのアイデアを集めて集合知化し、商品開発に役立てている企業もあります。
技術と経験の伝承
ナレッジマネジメントは、技術と経験を伝える際にも有効です。例えば似たような処方組みの商品があれば、その作り方の手順や取り扱う際の注意点など、先輩社員の活きた情報を引き継ぐことができます。もちろん失敗例の共有も大切。組織内で何度も同じミスを繰り返す必要はありません。
市場投入へのスピードアップ
「類似商品のケースを踏まえた上で決定したい」「これでよいのか判断できる根拠がほしい」などの際にも、過去のナレッジは参考になります。結果、商品開発の各段階での意思決定を早めることができ、開発スピードもアップ。競合他社より先に新商品を市場へ投入できれば、事業の成長にも貢献します。
商品開発におけるナレッジマネジメントの具体例
例えば商品開発において下記のようなナレッジをシェアしてみるのはいかがでしょうか。
商品開発を担当されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
過去の商品データ
自社が開発してきたすべての商品のデータが、見やすくわかりやすく整理されていたら、これほど役立つナレッジはありません。開発プロセス、途中で出てきた課題やその解決策、結果、販売時期、市場の反応、売上などが共有されていれば、次の新商品を開発する際の方向性も見出しやすいでしょう。
成功事例
成功商品について、開発プロセスや採用している技術を共有すれば、ほかの商品開発にも適用可能です。「このようにアプローチしたらうまくいった」「キーポイントは○○だった」といった勝ちパターンを共有することで、確度の高い開発の法則が構築できます。
開発商品と開発担当者
開発部署と担当者をはじめ、外部スタッフも含めて、開発した商品とセットでデータ管理。必要な知識をまとめておくことによって社内の情報共有をスムーズにします。他部署や新入社員が新商品を研究開発する際にも、問い合わせのしやすい体制が整います。
商品開発におけるナレッジマネジメントが直面する課題
続いて直面しそうな課題を洗い出してみました。
ナレッジの収集に手間がかかる
商品開発の過程で必要な知識や情報は多岐にわたるため、それらを過不足なく収集し、整理するのは容易なことではありません。そもそも開発担当者の協力なくしてはナレッジを集めることはできませんが、優先順位の高い仕事に追われてナレッジ共有に時間を割くのは後回しになってしまう、といった声はよく聞かれます。
ナレッジの共有が困難
組織内でナレッジがうまく共有できないのは、「共有すべきナレッジのイメージが社員に伝わっていない」「導入したナレッジ共有ツールが使いづらい」といったことが考えられます。また商品開発と一口に言っても共有すべき情報の精査ができていないとナレッジ共有は形骸化してしまいます。
ナレッジの更新の必要性
新しい原料や生産技術は日々生まれているため、ナレッジは定期的に更新する必要があります。開発担当者や技術者がナレッジを共有しやすくするには、ナレッジ共有の手間を最小限化しましょう。使いやすいテンプレートを備えたナレッジマネジメントツールが重宝します。
ナレッジの評価が難しい
どのナレッジが新開発の商品に役に立つものであり、どのナレッジが今回は無関係なのか。ナレッジの価値を正確に評価し、それを次の商品開発プロセスに流用するには、その時点で高度な知識が求められます。既に古くなっているナレッジもデータベースにはあるかもしれません。ナレッジを活用する側にもリテラシーが必要です。
ナレッジの機密性
ナレッジの中には、自社の機密情報や社外秘の情報を含む場合があります。特に自社製品やサービスにまつわる情報は社外に漏れると大きな損失につながることから慎重に管理され、結果、共有しないという判断をしてしまうこともあります。権限設定などを十分に活用して、セキュリティに配慮しながら情報をシェアしましょう。
商品開発部門におすすめのナレッジマネジメントツール
最後に、4タイプのナレッジマネジメントツールをご紹介します。
商品開発のような知的業務の場合には、情報の検索性が非常に重要で、
タレント機能などが搭載されたツールもおすすめです。
ヘルプデスク型
ヘルプデスク型は、ナレッジマネジメントツールの主流です。文書を中心としたファイルをデータベースにまとめておくことで、情報をほしい人はいつでもアクセスが可能に。社内で問い合わせの多い内容をFAQ形式でまとめる「FAQ構築ツール」や企業内に保管されているデジタルデータを横断検索できる「エンタープライズサーチ」などがヘルプデスク型に該当します。
業務プロセス型
業務プロセス型は、知識のみならず業務の進め方についてのナレッジも同時に得ることを目的としたナレッジマネジメントツールです。コールセンター業務などで広く利用されており、顧客からの質問やクレームなどに対して過去に満足度の高かった回答を瞬時にオペレーター同士で共有できるのがメリットです。内容が高度な場合は、専門オペレーターや上司に交代できる機能が備わっているものもあります。
ベストプラクティス共有型
ベストプラクティス型は、優秀な社員が持っている知識やノウハウといった暗黙知を形式知化して、共有することで組織全体の能力水準を底上げする高度なナレッジマネジメントシステムです。例えばトップセールスマンの知識、思考パターン、行動パターンといったノウハウをマニュアル化し、ほかの社員でも再現できるようにするといったことが当てはまります。
>暗黙知と形式知とは?暗黙知を形式知に変換するメリットと手法
経営資産・戦略策定型
経営資産・戦略策定型のナレッジマネジメントシステムは、部署や個人が所有するナレッジの分析を行い、経営戦略や意思決定に活かす方法です。経営資産・戦略策定型のシステムは、これまでの業務で扱った膨大なデータ量の整理と分析が必要となるため、DWH(データウェアハウス)などのツールを活用するケースが一般的です。
知的業務のパフォーマンスを向上させる「saguroot」とは
商品開発は、必要な情報を集めることから始まると言っても過言ではありません。なぜなら何も情報がなければ、どのような方向性でどのような商品を開発すれば良いか定まらないからです。その際、先輩社員の知識やノウハウがつまった自社の情報は大いに役立ちます。商品開発、企画開発、新規事業など知的業務のパフォーマンスを高める鍵のひとつは、ナレッジマネジメントにあります。
sagurootは、博物館等の展示施設を多く手掛ける丹青社が培ってきた情報整理のノウハウを活かし、ユーザー視点のUX設計により直感的で効率的な検索体験を実現しました。検索による情報収集の効率化を実現することで、新しい価値の創出を支え、知的業務の生産性の向上につなげます。