コラム

2024.08.30

ナレッジマネジメントの4つの手法を解説!
特徴や適切な用途とは?

  • ナレッジマネジメント

近年、企業経営におけるマネジメント手法のひとつである「ナレッジマネジメント」が注目されています。また、ナレッジマネジメントをスムーズに推進するためには、知っておくべきナレッジマネジメント体系があります。本コラムでは、ナレッジマネジメントの第一人者である野中郁次郎氏らが提唱した4つのナレッジマネジメントの手法についての特徴を解説。それぞれどういった用途で用いると効果的なのか、選び方についてもまとめました。

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは、知識やノウハウ、成功事例や失敗事例といったナレッジを社内で共有し、企業の成長につなげていく経営手法のこと。言語化が難しい「暗黙知」を、誰もが理解できる「形式知」へと転換し、全社員が活用することがナレッジマネジメントの目的です。企業にとってナレッジマネジメントの活動が重要な理由は、優秀な社員の知識やノウハウを伝承することで、組織の業務効率や競争力を高めるためです。

ナレッジマネジメントとは?目的からメリット、進め方など解説

ナレッジマネジメントのメリット

ナレッジマネジメントには以下のようなメリットが挙げられます。

・高度な知的業務のパフォーマンスを高める
・組織全体の生産性向上や業務効率化を促進させる
・人材教育・育成を効率化する
・組織内のコミュニケーションを促進させる

ナレッジマネジメントが加速すると、複数のナレッジが組み合わされ、新しいナレッジ、画期的なナレッジ、高度なナレッジが生み出される可能性があります。これにより、企業の競争力を向上させるだけでなく、組織全体の生産性や業務効率化まで実現することができます。

また、人材育成や組織内のコミュニケーション活性化にも効果的です。学習に必要な基本情報をマニュアル化しておくことで研修にかかる時間を短縮しつつ、より具体的な事例に関しては社員同士で共有しあうコミュニケーションが生まれるでしょう。

ナレッジマネジメントのメリットとは?デメリットや導入手順も解説

ナレッジマネジメントの4つの手法

ここではナレッジマネジメントの4つのタイプについて解説します。
それぞれ活用するためのポイントが異なるため、自社に適したものを考えてみてください。

ベストプラクティス型

ベストプラクティス型とは、経験値の高い社員の知識やノウハウを形式知化し、社内全体で活用する方法。共有すべきナレッジを可視化、言語化し、ナレッジ共有ツールに蓄積することで、社員全員のスキルの底上げを目指します。ベストプラクティス型では、個人のナレッジをいかに収集するかが鍵になります。

知的資本集約型

知的資本集約型とは、組織に蓄積された膨大な知識データを経営戦略に役立てる方法です。データウェアハウスやデータマイニングなどの専用ツールを使用して、膨大なデータを多角的に分析し、新しい価値を生み出すことを可能とします。分散されたナレッジを集約し整備することにより、収益アップを目指します。

専門知識共有型

専門知識共有型とは、社員の専門知識をデータベース化し、すぐに検索・閲覧できるようにするナレッジマネジメントシステムのこと。いわゆるFAQページのようなもので、質問への回答を予め用意しておくことによって、担当者の負担を減らすなど、時間削減や業務の効率化に貢献します。

顧客知識共有型

顧客知識共有型とは、顧客とのやりとりや対応履歴をデータベース化し共有することで、最適な対応策を導き出す手法です。顧客情報が多ければ多いほどデータベースは充実し、自身が経験したことのないケースでも適切な対応がしやすくなるほか、社員によって対応に差が出ることが少なくなります。

ナレッジマネジメントの手法を選択する基準

上述の4つの手法は、それぞれどのような用途に適しているのでしょうか。
選択する基準として例を挙げてみました。

営業力の底上げに、ベストプラクティス型

優秀な営業社員の商談ノウハウやスキルを共有し、営業チーム全体のパフォーマンスを上げたいと言った場合には、ベストプラクティス型が適しています。「○○が正しいやり方だと思われがちだが、実際は××したほうがよい」など、実体験をもとにしたナレッジを参考にしながら業務にあたることは、新たなナレッジ創出にもつながります。

他社の知見も参考にしたいなら、知的資本集約型

自社のナレッジだけでなく、他社のナレッジも参考にしたい場合は、知的資本集約型のナレッジマネジメントが適しています。組織や業界を超えた事例、ノウハウ、技術といった知的資産を集めることで、自社の経営戦略の立案に活かし、収益アップを目指します。多種多様なナレッジを組み合わせることで、独自性のある付加価値を創造します。

スペシャリストのコミュニティをつくる、専門知識共有型

専門的な知識をデータベース化し、誰がどのような知識を持っているのかを明確にしたいというニーズがある場合は、専門知識共有型が適しています。専門知識がツール内に管理されていて、知識を持つ社員に質問できるコミュニティができれば、課題の解決スピードは大きく変わるでしょう。専門家から知識を引き出すための環境づくりがポイントになります。

サービス品質を安定させるには、顧客知識共有型

顧客サービスの質を高めたい場合は、顧客知識共有型のナレッジマネジメントが適しています。担当社員や担当部署が管理している、顧客の個人情報や対応履歴を広く共有することで、対応のばらつきを防ぎます。似たようなトラブルが続いている、担当者が不在だと対応ができない、引き継ぎを速やかにしたいといった声が聞かれたら実施してみる価値があります。

ナレッジマネジメントを導入する手順

ナレッジマネジメントを導入することが決まったら、以下のようなステップで進めるとよいでしょう。

1.担当者・チームの編成
2.導入する目的の設定
3.共有情報の選定と知識の収集・整理
4.仕組み・技術基盤の整備
5.社員のサポートと定期的な評価・改善

まずはプロジェクトチームを編成し、担当者を決めましょう。次に、担当者を中心にして、ナレッジマネジメントを進める目的や共有するべきナレッジを明確にしていきます。それらを踏まえて、いよいよ自社に合ったナレッジマネジメントツールの選定です。導入後は実際に社員が活用しているかを定期的に確認し、評価や改善を繰り返します。

ナレッジマネジメントの注意点

ナレッジマネジメントを推進するうえで、失敗しないために注意するべきポイントは以下の通りです。

リソースやノウハウなどの整備

ナレッジマネジメントを円滑に進めるには、時間と労力がかかり、社内で対応可能な体制構築やノウハウも必要です。ツールの選定にはじまり、カテゴリー分けやフォーマット作成など、担当者は情報を収集して自社にあったナレッジマネジメントの在り方を見極めなければなりません。運用が始まったあとも継続して更新状況をチェックしなければなりません。ナレッジマネジメントの重要性やメリットを社内で啓蒙することがポイントです。

社員への浸透・活用

ツールを導入し、環境を整備したものの、ナレッジ検索する習慣がつきにくく活用できないケースも残念ながら見受けられます。原因は「内容が古くてほしい情報がない」「情報が見つけにくい」「ツールが使いにくい」などが挙げられています。

こうした状況に陥らないためにも、ナレッジマネジメントツールの導入がおおすめです。常に情報の鮮度が担保できるように、ナレッジを管理する担当者も決めておき、社員が問題なくナレッジマネジメントツールを活用できるよう、マニュアル整備などのサポートも検討しましょう。

まとめ

ナレッジマネジメントというと、ナレッジを創造するためのプロセスを4つに分類したSECIモデルの話をよく聞くと思います。それに対して、本コラムで紹介した4つのナレッジマネジメント体系は、実際にナレッジを活用することに焦点を置いたもの。SECIモデルほど認知度は高くありませんが、組織の情報共有においては押さえておきたいトピックですので、ぜひ参考にしてください。ナレッジマネジメントを導入すること自体が目的にならないように、自社にふさわしいものを選択していくことが重要です。

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