エンタープライズサーチとは?
機能や導入メリットなど基礎から解説
- エンタープライズサーチ
エンタープライズサーチとは、企業内に散在する膨大なデジタルデータを一括で横断検索できる企業内検索エンジンのこと。日々デジタルデータが増加しつづける現在、エンタープライズサーチは企業にとってなくてはならないツールでとして注目を集めています。本コラムは「エンタープライズサーチの基礎編」と題して、その機能や導入のメリット、活用方法についてまとめました。
エンタープライズサーチとは
エンタープライズサーチとは、社内のサーバ、クラウドのストレージ、ローカルなどさまざまな場所に保管されているデジタルデータを一括で横断検索できる企業内検索エンジンのこと。ファイル形式も文書、PDF、画像、動画などを問わずに検索することが可能なため、情報検索の効率を上げるツールとして広く利用されるようになりました。
エンタープライズサーチの仕組み
エンタープライズサーチは、クローラーと呼ばれるデータを巡回・収集するプログラムが企業内のさまざまなデータソース(メール、データベース、クラウドストレージなど)から情報を収集し、インデックスを生成します。このインデックスは、検索に対して高速に応答できるようなデータ構造になっています。
そして、ユーザーが検索クエリを入力すると、エンタープライズサーチエンジンはインデックスを参照し、関連性の高い結果を表示します。このとき、自然言語処理(NLP)や機械学習の技術を用いて、ユーザーの意図を理解し、より精度の高い検索結果を提供することが一般的です。
エンタープライズサーチが求められている理由
エンタープライズサーチが求められている理由は、企業内に膨大なデータが蓄積されるようになったためです。しかもデータの形式は多様で、保管場所も部署や社員によってさまざま。必要な情報を検索するには大変な労力がかかるでしょう。「どこかに役立つデータがあるはずなのに、どこにあるのかも、どう探したらいいのかもわからない…」。このような状況を改善するのがエンタープライズサーチです。
エンタープライズサーチとChatGPTの違い
エンタープライズサーチとChatGPTは、まったく異なるものです。エンタープライズサーチは社内のデジタルデータを横断的に検索するものであり、ChatGPTはインターネット上の膨大な情報をもとに質問に沿った回答を生成する対話型のAIチャットツールです。
それぞれの違いについて、詳細は以下よりご覧ください。
エンタープライズサーチの市場規模
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、世界のエンタープライズサーチの市場規模は2030年には90億8,000万米ドルまで達すると予測されており、今後市場は拡大していくものと思われます。
エンタープライズサーチの市場が拡大している大きな理由としては、ビジネスにおけるデジタル化が進む中で、組織が管理するデータの量が増加し、大量のデータの中から目的となるデータを瞬時に探し出す検索システムの需要が高まっているものと考えられます。
また、AIの搭載やテクノロジ―の進化によりエンタープライズサーチの精度が高まることで、より複雑な検索条件下においても検索対象を見つけることができるようになってきていることも市場拡大を後押ししているものと思われます。
エンタープライズサーチの主な機能
では具体的にエンタープライズサーチには、どのような機能が備わっているのでしょうか。
ここではわかりやすく「検索」と「検索結果」の観点から説明します。
検索
横断検索
横断検索は、エンタープライズサーチの最大の特徴。
保管場所や保存形式にかかわらず、さまざまなデジタルデータを横断的に検索できる機能です。
全文検索
全文検索とは、複数の文書から特定の文字列を検索する技術です。
文書に含まれるすべての文字情報を対象として検索するため全文検索と呼ばれます。
ファセット検索
ファセット検索とは、日付、文章タイプ、所有者、サイズ、場所など指定の条件を選択することで、サイト内のコンテンツを絞り込めるナビゲーションのこと。目的の内容に効率よくたどり着くことができます。
あいまい検索・自然言語検索
あいまい検索とは、検索キーワードと完全には一致しない情報も、検索結果として表示する検索のことです。
自然言語検索とは、あいまい検索の技術をより発展させたもので、「スマートフォン/スマホ/携帯」といった検索ワードが一定ではない場合や、「スマートフォンから文書をプリントするには?」などの長文からも検索できます。「スマートフォンから文章を印刷する方法」といった検索結果が表示されやすくなるといった仕様です。
条件付き(絞り込み)検索
条件付き(絞り込み)検索とは、検索の対象範囲を指定できる機能のこと。
プロジェクトや顧客ごとに分けられている資料なども、特定のフォルダ内での検索に絞り込むことができます。
検索結果
エンタープライズサーチは、横断的に情報の検索ができるだけではなく、検索結果も高速に表示されるのが特徴です。レスポンスが速い理由は、システムを導入する際に、あらかじめ対象となるストレージにファイルの読み込みを済ませ専用のサーバーでインデックスごとに整理しているため。これにより検索の度に各ストレージを参照する必要がないからです。
また、候補となる資料の要約を表示したり、その資料に紐づく社員を表示したりという高度な機能を持ったエンタープライズサーチもあります。
エンタープライズサーチの導入メリット
次に、エンタープライズサーチを導入するメリットを6つお伝えします。
情報検索の効率化
エンタープライズサーチの活用によって、社内情報に自由にアクセスできるようになれば、新しいデータが見つけやすくなります。例えば資料作成の際などに流用できるナレッジがあれば、ゼロから作成する手間が省け無駄な作業を削減できるでしょう。情報検索が効率化されると、コア業務により集中して取り組めるようになります。
情報の可視化
エンタープライズサーチを導入すると、社員がいつどのようなキーワードを検索しているかといった検索履歴を取得することが可能です。現場のニーズや傾向を知ることで、経営層や管理職は経営戦略におけるアイデアを発見できるなど、効果的な一手を打ちやすくなるかもしれません。
意思決定の高速化
言語化されていない直感的な判断が、意思決定の際に重要な役割を果たすことはビジネスシーンでは頻繁にあります。ただし「類似のケースを踏まえた上で決定したい」「これでよいのか判断できる根拠がほしい」などといったケースもあるはずです。その際にもエンタープライズサーチが効果を発揮します。
セキュリティの強化
横断検索が特徴のエンタープライズサーチですが、中には機密文書や人事考課など全社員からアクセスされては困るデータもあるはず。エンタープライズサーチは、検索ユーザーに閲覧権限があるものだけを検索結果として表示することもできるなど、セキュリティをコントロールできるのもメリットです。
社員同士のコミュニケーションの向上
部署や業務内容、職種の括りに関係なく、全社員が広く情報にアクセスすることで、他部署や他職種とのコミュニケーションが生まれやすくなります。社歴や配属先の垣根を越えて知りたいことを質問したり、教え合ったりするような連携ができれば、いままでとは違う切り口のアイデアやソリューションも生まれるかもしれません。
コスト削減
1回あたりの検索時間が短縮されれば、しかもそれが全社員に適応されれば、大きな時間短縮になりコストの削減につながります。検索1回あたりの平均短縮時間、1日一人あたりの検索回数、社員数、利用率、月の営業日数、1時間あたりの労働単価をかけることで、コスト減についてシミュレーションする方法もあります。
エンタープライズサーチの導入課題
エンタープライズサーチには様々なメリットがある一方で以下のような導入課題もあります。
データの整備
エンタープライズサーチは社内に保管されている情報を一括で検索するシステムですが、そのためには部署・個人が保有している情報をデータ化する必要があります。紙ベースで保管している情報や暗黙知などの個人しかわかりえない情報などをどのように管理していくかを考える必要があります。
>暗黙知と形式知とは?暗黙知を形式知に変換するメリットと手法
検索精度
技術の進化により、エンタープライズサーチの検索精度は上がっているものと思われますが、例えば検索条件が少ない場合、検索結果が膨大になり結局そこから欲しい情報を探すのに多くの時間を要してしまう場合があります。
システムの使いやすさ
エンタープライズサーチは、全社員が使うことが想定されます。そのため、使い方が簡単で直感的であること、また、その有用性を理解してもらうことが重要です。
エンタープライズサーチの活用方法
最後に、エンタープライズサーチにおける3つの活用例をピックアップします。
活用方法についての詳細は下記ゴラムをご参考ください。
ナレッジマネジメントとして
エンタープライズサーチの主な目的は、ナレッジマネジメントです。たとえばひとつの製品に対しても、開発情報・設計情報・メンテナンスマニュアル・ユーザマニュアル・修理記録にいたるまで、部署や個人が持っていた知識やノウハウを組織全体で共有すれば、生産性は向上しますし、新規事業の道も拓けるかもしれません。もちろん社員のスキルアップや新人教育にも好影響です。
カスタマーサポート
商品情報や顧客情報、対応マニュアルなどを瞬時に検索できます。顧客がどのような用件で問い合わせしたのかを誰もが把握できる状況が整っていることは、カスタマーサポートのサービス向上につながるでしょう。カスタマーサポートはスピード感のある対応が求められるため、必要な情報を横断的に検索して瞬時に結果を出すエンタープライズサーチは非常に有効です。
意思決定のサポート
エンタープライズサーチを活用することで、個々の業務間でのデータや、作業の途中で発生するニーズの把握、情報の共有を全社員が把握できる状況が整います。またリアルタイム性もエンタープライズサーチの特徴。即時に情報が更新・共有されることで、新規企画や経営戦略などに関する重要な意思決定を、より迅速に行うことが可能になります。
まとめ
エンタープライズサーチの概要についてご理解いただけたでしょうか。社内にある膨大なデジタルデータから、ドンピシャでほしい資料を見つけ出すのは至難の技です。場合によっては何日もかかってしまうこともあるかもしれません。結局探し出せないかもしれません。ビジネスシーンにおいてそんな状況は珍しくないからこそ、エンタープライズサーチの効果は実感しやすいと思います。さまざまな業務に改善が見込めるエンタープライズサーチ、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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