グループ6社横断の情報共有で、資料検索が格段に充実


導入事例アサヒグループジャパン株式会社様
2025年から、アサヒグループ内6社、約600名の研究開発人材を対象に「saguroot」の利用が始まりました。これにより、事業会社や事業セグメントごとに管理されていた情報を横断的に共有できる環境が整いつつあります。本コラムでは、情報資産に関するこれまでの課題、既存ツールとの棲み分け、実際に使ってみた効果、そして今後の展望について、プロジェクトを担当されているアサヒグループジャパン株式会社の花田洋平さんにお話を伺いました。
アサヒグループジャパン株式会社 花田 洋平 氏
アサヒグループジャパン株式会社 研究企画部 副課長。
2022年入社。国内グループ各社のR&D領域における企画調整業務に従事している。
6社のグループ内の研究開発部門における情報共有について、何か課題を感じていましたか?
事業会社や事業セグメントごとに研究開発部門も分かれているので、独立して動いていました。情報資産も各社・各部門が個別に管理しているケースが多かったです。ただ、社会の変化が加速する中で、「お酒」「飲料」「食品」といった既存の枠組みに必要以上にとらわれ続けることは、新たな価値創造の妨げになってしまいます。グループ内に優れた知見があっても、それらが分散して見えにくい状態では、宝の持ち腐れになってしまう。今後を見据えると、こうした会社という枠を超えたグループ横断的な情報のやりとりを進めていくこと、言い換えれば情報の壁を取り払うことが不可欠だと考えていました。
情報の壁を取り払うことは、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
昨今では、お酒とソフトドリンクの中間領域のような、既存の分類では括れない新しいビジネスアイデアやイノベーションが次々と生まれ始めています。こうした変化に対応するためにも、グループ内で「誰が、どのテーマで、どのような協働を進めているのか」を可視化することに大きな意義があります。
また、グループ内では飲料事業に限らず、食品部門や研究所など、複数の部門がそれぞれ異なる企業や大学と協働しながら研究開発を進めています。外部との共創が活発になる一方で、情報が閉じられていると、知らないうちに契約上協働できない相手と繋がってしまう「競業避止義務」抵触のリスクも孕んでいます。
さらに、情報が見えないままでは、グループ内で全く同じ内容の研究をしてしまうなど「知の重複」による無駄も避けられません。新規事業を真面目に考えれば考えるほど、実は目指すアイデアは似通ってきたりするものです。
だからこそ、各所の動きや情報をグループ内で正しく共有・把握しておく必要があります。それは単なるリスク回避ではなく、無駄な重複をなくし、グループの総力で新しい市場へ挑戦するための基盤になると考えています。
これまでは、どのようなツールで情報管理をされていたのでしょうか?
SharePointです。使い慣れてはいるのですが、検索精度や情報を探す工数の多さに課題を感じていました。プレビュー機能がないので、自分がいま探している資料に該当するものなのかどうか、一つずつ開かなければならないのは結構な手間です。また、検索した結果が自分の求めている情報なのかがわかりにくい点も課題でした。例えば、「社内郵便を送る方法」という総務的な情報を検索すると、所管部門ではない社員のメール文面の一部がヒットしてしまうケースがあります。このような場合のように求めている情報に辿り着けているのか、わからないまま使っているところもありました。
今回、丹青社のナレッジマネジメントツール「saguroot」を導入した理由を教えてください
まず、傘下のアサヒビール株式会社で導入され、効果が出ていたことは大きかったです。検索の時間が短縮された、検索にかけていた時間をほかのことに使えることになったなどの声が上がっており、評判も良かったのでグループ全体への展開は自然な流れでした。 また、機能と費用のバランスが良かった点も導入理由のひとつです。社外資料も検索対象にしたいという要望もありましたが、そこまで範囲を広げるとなると、対象範囲の定義や環境整備に時間とコストがかかります。今回の主な目的は「グループ横断での情報共有を強化する」ということだったためsaguroot が最良だと判断しました。生成AI要約などの機能も充実していますし、費用もとても良心的だと思います。
sagurootではどのような情報を共有しているのでしょうか?
研究所報告書です。その年度に一定の成果が見られ、社内でオープンにすることが有益だと各研究所の所長が判断した研究開発内容について、各グループ会社の担当者が saguroot連携先のストレージに格納しています。 形式としては、A4縦のWordファイルが中心ですが、A4横のPowerPoint資料もあります。
どのように収集したのか教えてください
2025年3月に導入のアナウンスを行い、4月から準備を開始して、約6,000件のドキュメントを集めました。もともとSharePointに格納されていた資料を移行しています。内容を細かく精査したわけではありませんが、あまりにも古いデータや、他グループに共有してはいけない情報はもちろん選別しています。今後は年1〜2回の更新を予定していて、毎年100程度の資料が追加されると見込んでいます。
アクセス権限について考え方を教えてください
各社で研究開発部門に関連する人を選定してもらい、約600名にアクセス権限を設定しています。機密性の高い情報が多いため、情報漏洩のリスクを避けるためにユーザーは意図的に絞って運用しています。
複数の企業がいる中でタグは重要な役割を果たすと思いますが、どのような付け方をされたか教えてください。
タグは検索性を左右する重要な要素なので、技術・事業・マーケティングなどの観点から、各社に意見を出してもらい設定しました。直接は資料にそのワードが入ってなくても、検索に引っかかるのがタグの意義だと思うので、関連するワードや連想ワードを Excel に記入してもらいました。最終的に決まったタグは、技術寄りではなく マーケティング寄りのものが多く、技術系社員がユーザーではありますが、成果を商品開発等に結び付けることへの意識が現れた結果だともいえます。
saguroot導入から半年、どんな効果が出ていますか?
利用者のうち、約9割が「以前より検索が容易になった」「必要な資料を見つけやすくなった」と回答しています。一方で短期的な成果や数値をそれほど気にしていないのも正直なところです。特に基礎研究などは成果にならないプロセスも多く積み重なっているため、短期的な数字で効果を測るのは難しいからです。そのため、新しいシステムの導入に関しても必要な投資だと思っているので、短期的な数値はあまり追いかけていないですね。
具体的に届いている感想があれば教えてください
各資料に対して約200文字のAI要約があるのは喜ばれています。また、グループ間をまたいで検索できる機能も評価されています。saguroot導入をきっかけに改めて、グループ横断で情報を活用することの意義を再認識できたように感じます。もちろん業務上「使い慣れているSharePoint やCopilotで十分」という社員もいますし、「環境整備に時間や費用がかかっても、社外資料も検索対象にしたい」という声もあります。そんな中で面白かったのは、すごくいい資料を見たときに“ただ乗り”感があって申し訳ないので、「いいね!」「ありがとう!」「役立ちました!」みたいにリアクションできたらいいなという意見です。閲覧数はカウントされていますし、資料の中には担当者名も記載されているので、そこから資料を通したリアルなコミュニケーションが生まれれば、さらにイノベーションにもつながるのではという可能性を感じました。
既存ツールとsagurootの棲み分けはどうしていますか?
saguroot は研究所報告書という、成果や結論が明確であり、一定のフォーマットで作成された資料を収集する場としています。その他の資料は SharePointを並行して運用、併存する方針です。
どのような情報検索のあり方が理想だと考えていますか?
当面は、技術部門の資料をより使いやすい環境に整えることが優先です。現実的には、公開範囲の設定や情報リテラシー向上などの課題がありますが、将来的には研究報告書だけでなく、研究開発に関するより広範な情報が格納され、ワンストップで検索できる環境が望ましいと考えています。現在は個人が保有している情報や、1社内だけで閉じている情報もありますが、必要に応じて速やかに共有できることが理想ですね。会社の壁を取り除いて、風通しの良い情報環境を作りたいです。 実際に先行導入したアサヒビール社では、saguroot を通じてコラボ提案やアイデア創出が生まれた事例もあります。情報の共有化によって、こうした創造的な活動が生まれることを期待しています。
今後のsagurootに期待することは何でしょうか?
資料にリアクションできる機能があれば良いという感想を紹介しましたが、さらに一歩進めて、報告書のどの部分が刺さったかフィードバックできる機能があったりすると面白いと思います。心に残った本の一文にマーカーを引くように、報告書の刺さった1行・2行を色付けできれば、作成者のモチベーションも上がると思いますし、お互いに話したい気持ちも生まれる気がします。会社を超えて知らない人同士でも連絡しやすいカルチャーが生まれれば、グループ全体の活性化にもつながると思います。
これからsagurootを導入する企業の担当者にアドバイスをお願いします
自分の仕事のメインは導入だと思っていたんです。方針を決めて、諸々の調整や依頼をして。でも実際には導入後の運用や定着が重要だと感じました。社内掲示板でsagurootについての情報発信をしているんですけれど、継続的に社内広報をやることは必須です。既存ツールに対する慣れや愛着も当然ありますし、忙しい日々の中で新しいツールを使ってもらうには、意識的に促す必要があります。そのため同じ内容でも何度もアナウンスしたり、アンケートの声を拾って面白い意見を共有したり、機能改修があれば伝えるなど定着を促すアクションに注力することが大切なのではないでしょうか。
最後に丹青社の対応について教えてください
すごくよくしていただいたので、このインタビューに協力しています(笑)。導入検討時に「AIが報告書を学習してしまわないか?」という懸念が出たときは、専門スタッフがわかりやすく説明してくれて安心できました。
導入の際にはオンライン説明会も開催してもらいましたが、導入してハイ終わり、というわけでは全然ありません。運用後もわからないことが出てくると、すぐに丁寧に連絡を返してくれます。
また、上述の「定着を促すアクション」を自社だけで抱え込む必要はありません。丹青社さんとは定期的に活用状況報告会を実施しています。そこで客観的な利用状況を分析し、定着に向けた次の一手を一緒に議論・サポートしてもらえる体制があります。導入後の並走支援があることは、担当者にとって大きな安心材料になるはずです。
ナレッジマネジメントシステムは、むしろ運用を始めてからが勝負です。使っていくうちに気づくことや状況・ニーズの変化にも柔軟に対応してもらえるのは心強いですね。当初は5社での利用を想定していましたが、結果的に6社になり、今後は7社になる可能性もあります。そうした変化にも柔軟に対応してくれますし、一緒にビジネスを発展させてくれるパートナーだと思っています。